はじめに
クリアコードの林です。 今回は、Debianパッケージのメンテナンスに関わる上で、Debian Maintainerになるための方法を紹介します。
役割でみるDebianの開発に関わる人々
Debianには多くの開発者が関わっていますが、Debianパッケージをメンテナンスしている開発者の権限の観点で分類するといくつか種類があります。
-
Debian Developer(Debian開発者)
-
Debian Maintainer(Debianメンテナー)
-
Package Maintainer(パッケージメンテナー)
Debian Developerはその名が示すようにDebianの開発そのものに広く関わる権限をもっている人です。 たとえば、Debianパッケージをアップロードしたり、Debianプロジェクトに関わる投票権を保持しています。1
Debian Maintainerは、Debian Developerにスポンサーをしてもらわずとも、特定のDebianパッケージに関してはアップロードすることを認められている人です。
Package MaintainerはDebianパッケージのメンテナンスに関わってはいますが、アップロードはDebian Developerにお願いしないといけない人のことです。
Debianパッケージをメンテナンスするのに、Debian DeveloperやDebian Maintainerであることは必須ではありません。 ただし、Debian Maintainerであれば、アップストリームが新しいバージョンをリリースしたときに割と早く対応しやすいということはいえます。 これは、Package Maintainerと違ってDebianパッケージを自分でアップロードするところまでできる、というところによります。 都合よくメンテナンスしているパッケージのスポンサーをしてくれる人がいればよいのですが、そうでない場合もあり得ます。 継続的にメンテナンスしているパッケージがあるのであれば、Debian Maintainerになる価値があるかもしれません。
Debian Maintainerになるまでの流れ
2018年8月時点では、次のような流れになっています。
-
Debian Maintainerに専用のWebサイトから応募する
-
なぜDebian Maintainerになりたいのかをアピールする
-
Debian社会契約、フリーソフトウェアガイドライン、マシン使用ポリシーなどに同意する
-
GPG鍵のチェックを受ける
-
Debian Developerの推薦をもらう
-
レビューを受けて承認してもらう
なお、応募資格としてGPGの鍵に(最低1人、もっと多い方が望ましい)Debian Developerに署名してもらっておく必要があります。 もしまだであれば、お近くのDebian勉強会に参加するなどしてDebian Developerに署名してもらうとよいでしょう。 2 定期的に開催されている勉強会がいくつかあります。
Debian Maintainerに専用のWebサイトから応募する
Debian Maintainerに応募するには専用のサイトである Debian New Members にアクセスします。
ページの中ほどにJoin the NM processというリンクがあるのでクリックします。
入力フォームから以下の情報を入力して送信します。
-
GPG鍵のフィンガープリント
-
名前
-
連絡先のメールアドレス
-
ユーザー名
-
自己紹介文
上記のうち、ユーザー名というのはDebian Maintainerに応募する場合には必須ではありません。Debianプロジェクトの機材(サーバーとか)にアクセスするゲストアカウントとして使われるものだからです。将来的に必要そうであれば、予約することができるので申請しておいてもいいでしょう。
入力フォームを送信すると、確認用のメールがGPGで暗号化されて届きます。復号したテキストに含まれるURLにアクセスするとメールアドレスの確認が完了します。 ステータスがDebian Contributorになっているので、「request new status」というリンクをクリックします。
ステータスが、Debian Contributorになっているのを、Debian Maintainerに変更して送信します。
なぜDebian Maintainerになりたいのかをアピールする
Declaration of intentとしてなぜDebian Maintainerになろうとしているのかを書いてGPGで署名したうえで入力フォームから送ります。
Debian社会契約、フリーソフトウェアガイドライン、マシン使用ポリシーなどに同意する
内容を確認した上で、内容に同意する文言にGPGで署名したうえで入力フォームから送ります。
GPG鍵のチェックを受ける
とくにやることはありません。問題や疑念があれば指摘されるはずです。
Debian Developerの推薦をもらう
Debian DeveloperにDebian Maintainerとして適格者であることを示す推薦文を書いてもらう必要があります。 知り合いのDebian Developerがいればお願いするとよいでしょう。
レビューを受けて承認してもらう
ここまでくるとステータスが「Waiting for review」に変わり、管理者の承認待ちの状態になります。 人によって承認されるまでの期間はばらばらのようです。あせらず一ヶ月くらいをみておくといいかもしれません。
まとめ
今回はDebian Maintainerになるための方法を紹介しました。 Debianのパッケージのメンテナンスに興味があったり、継続的にPackage Maintainerとして活動している人は、Debian Maintainerを目指してみるのはいかがでしょうか。