6/13に開催された第2回静岡ITPro勉強会に講師の1人として参加し、milter managerについて話しました。
資料: milter manager
勉強会はとても内容の濃いものでした。勉強会の内容は勉強会代表となかさんの第2回 静岡 IT Pro 勉強会、無事終了しました - 静岡 IT Pro 勉強会日誌が詳しいです。ここでは、かいつまんで紹介します。
迷惑メールの現状と対策 - さとうさん
最初にさとうさんが網羅的に迷惑メール対策の現状とおすすめの迷惑メール対策を話してくれました。おすすめの迷惑メール対策は、まず、SMTPセッション中で軽めのフィルタを使って多くの迷惑メールを落として、抜けてきたものはコンテンツベースのフィルタを使って対応するというものです。
1つのフィルタで何もかも解決するのではなく、複数のフィルタを組み合わせて実現するという方針です。1つのフィルタで完璧を求めてしまうと誤判定が増えたり、副作用が大きくでてしまう危険性があるからです。milter managerのベースは、複数のmilterをうまく組み合わせるという部分ですが、これは、さとうさんの方針と重なる部分が大きいです。
ちなみに、milter managerのインストールドキュメント にそってmilter managerをインストールすると、さとうさんの考案したRgreyが実現できます。このあたりからも、milter managerがさとうさんの影響を受けていることがわかります。
今 おさえておきたいドメイン認証技術 - umqさん
次に、umqさんが送信ドメイン認証の概要を話してくれました。Authentication-ResultsがRFCになっていた(RFC5451)ことがわかっ たことが収穫でした。milter managerのtrunkにはAuthentication-Resultsをパースする処理があるのですが、その処理を書いているときに、どこかでこのフォーマットは定義されていないのかと思いながら書いていたのです。いずれRFC5451に合わせたものにする予定です。
milter manager - 須藤
最後はmilter managerの発表でした。いくつか話し忘れたことがあるのが残念です。例えば、RgreyにSPFを組み合わせるとS25Rで誤検出してしまうmail-ew0-f216.google.comというようなGMailからの接続を救済することができます。1こういうこともできるよ、ということだけではなく、そうすることによりどのような効果があるかも忘れずに話すべきでした。
資料にはmilter managerのことだけではなく、milter-greylist の設定例もあるので、milter-greylistを使っている場合は参考になるでしょう。
また、まっちゃだいふくさんが通常のmilterの動作フローとmilter managerを導入した場合の動作フローの図を描いてくれています。これまでのmilter managerの動作イメージ図より、流れがわかりやすくなっています。こちらの図の方が理解しやすいという方も多いのではないでしょうか。まっちゃだいふくさん、ありがとうございます。
シークレット発表
時間が少し空いたので、急遽、予定にはない発表が行われました。
まず、勉強会の中でSpamAssassinの認知度が低いということがわかったので、滝澤さんがSpamAssassinについて話してくれました。滝澤さん、頼もしいです。
次に、さとうさんが、こんな迷惑メール対策システムが欲しい、ということを話してくれました。様々な情報から自動学習して、メンテナンスフリーで動くシステムです。とても共感できます。
という、とても内容の濃い勉強会でした。
勉強会で広がる輪
勉強会にでるメリットはいくつかありますが、ここで2つ紹介します。
勉強会のメリットの1つは、直接会って話せることでしょう。
さとうさんとは勉強会の前に、迷惑メール対策の実現方法についていろいろやりとりしていましたが、やはり、直接会って話せると進みが違います。
IAjapan 第7回 迷惑メール対策カンファレンスのときに滝澤さんと、「オープンソースソフトウェアで迷惑メール対策を実現している人たちの間で情報共有できたらもっと有効な対策が実現できそうだよね」というような話をしていたのですが、今回、さとうさんともそのような話をすることができました。秋には実現できるかもしれません。
今回のように直接話す機会があったので進んだ話と言えるでしょう。このような機会になった勉強会を運営してくれたスタッフのみなさん、ありがとうございます。
また、きっかけになるということもメリットです。
勉強会のために事前にやりとりをしている中で、今回ドメイン認証関連の発表をしたumqさんがmilter managerのportsを作成してくれました。FreeBSDはmilter managerが公式にサポートしているプラットフォームのため、ぜひ、パッケージを提供したかったのですが、今回の勉強会がきっかけでそれが実現されました。
作成してくれたumqさん、声をかけてくれたまっちゃだいふくさん、さとうさん、ありがとうございます。
まとめ
ここ数ヶ月milter managerについて様々な場で話す機会をもらっています。それぞれの場で雰囲気も聞いてくれる人のタイプも違うため、話す内容やそれぞれの話題の重みを変えて話しているつもりです。そのため、用意をすることは大変ですが、異なる場に行くことにより、話す側として様々なメリットがあると感じています。フィードバックの内容が多様になったり、いろいろな角度からの考えや実状が聞けることだったりします。
現在はたくさんの勉強会が開かれていて、それぞれ異なる場となっています。勉強会に参加したことがある人でも、違う場の勉強会に参加してみるというのはよい経験になるでしょう。また、発表者として参加するのもまたよい経験になるでしょう。
怖がらず、新しいことにふれてみるのもよいのではないでしょうか。
次のmilter manager
今週末はオープンソースカンファレンス2009 Hokkaidoで話します。今回の勉強会で、初めに迷惑メール対策の基本的なことを話した方がよいことがわかりました。さとうさんから、今回さとうさんが話した内容を取り入れてもよいと言ってもらえました。そこで、静岡でさとうさんが話したすばらしい内容の一部を北海道でも紹介する予定です。
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SPFを有効にしたmilter-greylistを使っている場合は、デフォルトでSPFがpassする場合はGreylistingをスキップします。 ↩