迷惑メール対策ソフトウェアmilter manager 1.3.1をリリースしました。
開発版
milter managerのバージョン番号は「MAJOR.MINOR.MICRO」というルールに従ってつけています。例えば、今回のバージョンの「1.3.1」は以下のようになります。
- MAJOR: 1: メジャーバージョン
- MINOR: 3: マイナーバージョン
- MICRO: 1: マイクロバージョン
このうち、マイナーバージョンが偶数のリリースは安定版、奇数のリリースは開発版という扱いになっています。そのため、「1.3.1」は開発版になります。
開発版は安定版よりも新しい機能がありますが、安定して動作しない可能性があります。しかし、次期安定版が近くなった開発版はわりと安定して動作します。そして、今回の1.3.1はわりと次期安定版に近いリリースになります。もし、以下で紹介する開発版のみにある「評価モード」を利用したい場合は試してみて下さい。
評価モード
世の中にはたくさんのmilterがありますが、すべてのmilterがすべての環境で効果的なわけではありません。それぞれの環境にあった迷惑メール対策を行えるmilterを導入する必要があります。
そのためには、導入する前にどのような効果になるかを試してみる必要があります。ENMAやOpenDKIMのように結果をメールヘッダに追加するタイプのmilterであれば、想定とは違う動作だったとしても既存のメールシステムにはほとんど影響はないため、既存のメールシステムに導入して効果を確かめることができます。一方、milter-greylistなどのように一時拒否や拒否をするタイプのmilterであれば、誤判定のメールを受信できなかったなど、既存のメールシステムに与える影響が大きくなるため、既存のメールシステムで効果を確かめることが難しくなります。
そのような場合でもmilterの効果を確かめることができるようにするのが1.3.1で追加された「評価モード」です。評価モードを用いると、実際にmilterを動かしますが結果は無視します。実際にmilterを動かしているので、milter managerやmilter自身が出力するログなどでどのように動作したかを確認することができます。milter managerはログからグラフを生成する機能もあるので、視覚的に効果を確認することもできます。
先日の第09回 まっちゃ445勉強会の資料で評価モードについて説明した図があるので、それを見てみましょう。
まず、評価モードを使っていない通常時の動作の流れです。
milterがメール本文を変更するなどの操作をした場合は、milter managerはそれをそのまま呼び出し元のメールサーバ(図では受信側と書いている部分)に返します。注目してほしいのは、milterと呼び出し元のメールサーバの間にいるmilter managerがやりとりをログに残し、グラフ化している部分です。milterやメールサーバに結果の統計情報を収集する機能がなくても、間にmilter managerを導入するだけで結果の統計情報を収集することができます。これは、milterの効果を確認するときにとても便利です。
それでは、評価モードを使っているときの動作の流れです。
上の2つのmilterが評価モードで動いています。評価モードのmilterがメール本文を変更するなどの操作をしていますが、呼び出し元のメールサーバにはその結果は返っていません。つまり、milterの結果が既存のメールシステムに影響を与えないということです。しかし、milterの結果の統計情報を収集する部分は動作します。これにより、既存のメールシステムに影響を与えずにmilterの効果を確認することができるようになります。
いつまでも同じ迷惑メール対策が効果があるとは限りません。迷惑メール送信側も進化していますが、それに対する有効な対策も考案されています。そのような対策を導入する場合、ここで紹介した評価モードが有用になるでしょう。
まとめ
1.3.1がリリースされたので、新機能「評価モード」を紹介しました。
1.3.x系列は他にも1SMTPセッションで複数のメールを送る場合の処理が改善されていたり、milter-greylistを用いたtaRgreyに対応していたりします。
このような機能が必要な場合は1.3.1を試してみてください。もし、問題があった場合はメーリングリストで報告してもらえると助かります。
また、milter manager導入情報もお待ちしています。以下のような情報をメーリングリストかkou@clear-code.comまで送ってもらえると、今後の開発などの参考になるので助かります。
- milter managerを利用しているメールサーバのスペック(OS、CPU、メモリ量など)
- milter managerを利用しているメールサーバの規模(単位時間あたりの流量やアカウント数など)
- milter managerの使い方(どのようなmilterと一緒に使っているか、特別な設定をしているかなど)
- その他、コメント(ここが便利だ、この機能が不足している、こういう情報が欲しいなど)
最後になりましたが、先日発売されたセキュリティExpert 2009に迷惑メール対策関連の小さな記事(4ページ)を書きました。見かけた場合はぜひ手に取ってみてください。