物事の進め方や問題の解決の仕方などを決めるとき、他の人に相談します。しかし、いざ相談してみると、うまく相談できずに、もどかしい思いをしたり、相談の時間がいたずらに長くなって相談相手に迷惑をかけてしまったりすることがあります。うまく相談できていないときは、自分の状態をうまく伝えられず、相談相手を困らせたり、役に立たないアドバイスをもらったりします。
相談する目的はいいアドバイスをもらうことです。「いいアドバイス」とは、「自分の状態を良くするのに役立つアドバイス」です。いいアドバイスをもらうと、相談した自分の状態をいい方向にもっていくことができるからです。いいアドバイスをもらうためには、相談の仕方に気をつける必要があります。今回は、他の人に相談していいアドバイスをもらうための相談の仕方について説明します。
いいアドバイスをもらうためには伝える情報に気をつける
いいアドバイスをもらうためには、相談相手に伝える情報と、その伝え方に注意する必要があります。伝える情報が足りなかったり、伝え方が悪かったりすると、相談相手を困らせてしまいます。これではなかなかいいアドバイスがもらえません。
例えば、「このソフトがうまく動かなくて困っています」と相談したとします。すると、相談相手は「だからどうしたの?」と思います。うまく動かないソフトとはどんなソフトなのか、今はそのソフトがどういう風に動いていて困っているのか、本当はどう動いて欲しいのか、といった情報が相談の内容から伝わってこないからです1。そのため、アドバイスをしようと思ってもどうしていいのかわからずに困ってしまいます。この場合、相談相手は「だからどうしたの?」と聞き返すか、「たぶんどう動かせばいいか聞きたいのだろうな」と推測してアドバイスすることになります。どちらの場合でも、相談相手に余計な手間をかけさせています。相談する最初の段階で伝えていれば、相談相手が聞き返したり推測したりする必要はないからです。
また、もらったアドバイスがすでに自分でやったことだったときは、「いや、それはもうやったのですが、うまくいきませんでした」と相談相手に返すことになります。すると、相談相手は「先に言ってよ!」と思います。すでにやっていることをアドバイスしてもアドバイスにならず、無駄になってしまうからです。
このように、相談するときに自分の持っている情報を全て伝えないと、相談相手に余計な手間をかけさせたり、無駄なアドバイスをさせたりして、いいアドバイスはなかなかもらえません。 また、自分の持っている情報を小出しに伝えると、相談相手がその都度アドバイスを考える必要があるため、アドバイスをしにくくなります。もし、そこでアドバイスをもらっても、情報を小出しにしているせいで役に立たず、無駄になってしまうこともあります。相談相手とやりとりして小出しに情報を伝えても、最終的にはいいアドバイスがもらえるかもしれません。しかし、相談の最初にすべての情報を伝えてしまったほうが、相談相手にいいアドバイスを考えることだけお願いすることができます。
相手からいいアドバイスをもらうために伝える情報
いいアドバイスをもらうためには、相談相手がいいアドバイスを考えやすいように、自分の持っている情報を伝える必要があります。そのために、まず、次の3つの項目に沿って自分の持っている情報を整理します。そして相談相手にこの3つの順番で情報を伝えると、相談相手がアドバイスしやすくなります。
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今の状態
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目指している状態
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相談する前にすでにやったこと、それをやった後に目指している状態にならなかった理由
以下、それぞれの項目について、なぜそれを伝える必要があるのかについて説明します。ただし1つ目と2つ目はまとめて説明します。
今の状態と目指している状態を伝える
まず、今の状態と、目指している状態は何か、という2つについて説明します。
1つ目の、「今の状態」とは相談している自分の状態を指します。例えば、何か問題が発生しているなら、発生している問題の内容が今の状態にあたります。2つ目の、「目指している状態」とは次に自分がなりたいと思ってる状態を指します。例えば、何か問題が発生しているなら、問題を解決してどういう状態にしたいか、ということが目指している状態にあたります。
相談相手はこの2つを伝えられると、「なるほど、今の状態はこうで、目指している状態はこういうのか。で、今の状態から目指している状態になりたくて相談しているのだな」と考えます。すると、アドバイスはそこを埋めるためのものだ、と考えることができます。自分の今の状態と目指している状態を相談相手と共有することで、今の状態から目指している状態までの距離を相談相手がつかみやすくなります。相談相手はそこからいいアドバイスを考えることができます。
相談する前にすでに自分でやったこと、それをやった後に目指している状態にならなかった理由を伝える
次に、相談する前にすでに自分でやったこと、それをやった後に目指している状態にならなかった理由について説明します。なおこれ以降、「相談する前にすでに自分でやったこと、それをやった後に目指している状態にならなかった理由」のことを、「すでにやったこと」と呼ぶことにします。
すでにやったことを伝えていると、相談相手はそこからもっといい方法を考えられます。「それでうまくいかなかったならこっちはどうだろう?」と、すでにやったことを元にアドバイスを考えることができます。また、すでにやったことを相談した最初の段階ですべて伝えることで、相談相手はそのやったことをアドバイスの内容から省くことができます。小出しにしないことで、相談相手にその都度アドバイスを考えさせることなく、「無駄なことをアドバイスした」と思われずにすみます。
すでにやったことを整理するときにやってはいけないのが、やるのは当たり前だからとか、恥ずかしいなどの理由をつけて、すでにやったことを伝える情報から消してしまうことです。やったことは何でも情報として伝えるようにしましょう。相談相手は伝えられた情報からアドバイスを考えるからです。
まとめ
他の人に相談するときには、自分のもっている情報を、今回説明した3つの項目に整理してすべて伝えることで、いいアドバイスをもらいやすくなります。いいアドバイスをもらって、自分のやっていることをうまく進めましょう。
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困っていることだけは伝わります。 ↩