はじめに
2013年10月1日、来年4月から予定通り消費税率を8%に引き上げるとの発表がありました。そこでクリアコードでも消費税率引き上げに対して、どのような対応が必要か確認してみました。すると、すぐに対応しなければいけないものがあることがわかりました。そこで、今回は消費税率引き上げにともないクリアコードで実施した対応とこれから必要となる対応を紹介します。
今回の消費税率引き上げの概要
消費税とは
消費税は、国内におけるほぼすべての商品の販売、サービスの提供に課税する間接税です。消費税は、事業者が販売する商品やサービスの価格に含まれて、次々に転嫁されます。そして最終的に商品を消費、またはサービスの提供を受ける消費者が消費税を負担します。消費税を負担するのは消費者で、消費税を申告、納付するのは事業者となります。このように負担者と納税者が異なる税金のことを間接税と呼びます。では、消費税の納税義務はいつ成立するのかというと、原則として商品の引き渡しやサービスの提供をした時になります。
消費税率引き上げの対応にあたっては、この商品の引き渡しやサービスの提供がいつになるかによって税率が変わるので、注意する必要があります。また売上を計上するタイミングが消費税の納税義務発生のタイミングになるので、売上計上基準によって、適用される消費税率が変わることがあります。
消費税率引き上げの内容
消費税率は平成9年に3%から5%に引き上げられました。今回は17年ぶりの消費税率引き上げとなります。
「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改定する等の法律」(以下、「消費税法改定」)により、消費税率は平成26年4月1日に8%、平成27年10月1日に10%へと2段階で引き上げられることになりました。この法律には「経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、消費税率引き上げ前に、経済状況を総合的に勘案した上で、消費税率の引き上げの停止を含め所要の措置を講ずる」ことが定められており、平成25年10月1日の閣議で平成26年4月1日に8%に引き上げることが正式に決定しました。
経過措置
今回の消費税法改定では、税率引き上げに伴う経過措置が設けられました。本来平成26年4月1日以降に行われる資産の譲渡等には8%の税率が適用されます。しかし経過措置によって、一定の条件を満たす取引については、8%に引き上げられた後でも5%を適用することができます。
たとえば、平成25年9月30日以前に契約したソフトウェア受託開発案件の場合、納品が平成26年4月1日以降であっても、5%の税率が適用されます。他には、平成26年4月1日以降に利用する鉄道や飛行機の交通運賃も、平成26年3月31日までに支払った場合は、5%の税率が適用されます。
経過措置の内容は、国税庁の資料「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」に詳しく記載されています。自社の取引の中で、経過措置に該当するものがないか、この資料をひと通り目を通して確認するのがよいでしょう。
売上への影響と対策
クリアコードでは、まず業績への影響が大きい売上への影響と必要な対策を確認することにしました。
売上への影響
クリアコードのサービスは請負契約と保守/サポート契約にもとづき提供しています。
契約形態によって売上計上の方法が異なるため、消費税率引き上げの売上への影響と、必要な対策をそれぞれ確認しました。
請負契約
請負契約では納品日に売上計上しています。契約締結日が平成25年10月1日以降で納品日が平成26年4月1日以降の契約は経過措置の対象外となるので、消費税率は8%となります。もしこれに該当する契約を消費税率5%で契約してしまっている場合は対応が必要です。なお、経過措置の対象となるのは物品の引き渡しがあることが条件となります。納品物の定めがない場合は経過措置の対象にはならないので注意が必要です。
確認のポイントは次のとおりです。
- 平成26年4月1日以降が納期の請負契約
- 契約締結日が平成25年9月30日以前なら経過措置の対象となり、請求時の消費税率は5%でOK
- 契約締結日が平成25年10月1日以降なら、請求時の消費税率は8%
契約書に消費税率5%で算出した請負金額を記載してしまっている場合は、発注元に対して消費税率8%で算出した請負金額への変更をお願いしなければなりません。5%の金額で受け取った場合は、自社で差額の3%分を負担しなければなりません。
例えばもとの請負契約が次の内容で、消費税率上げにともなう請負契約の変更を行わなかったとします。
- 契約日 平成25年10月1日
- 納品日 平成26年4月30日
- 請負金額 3,150,000円(消費税込)
納品日の平成26年4月30日に無事納品、検収が完了したとすると、この日に売上3,150,000円を計上します。この取引は経過措置の対象外となるため、8%の消費税が発生します。よって売上金額の3,150,000円には8%の消費税が含まれているとみなされます。消費税額は3,150,000 / 1.08 * 0.08 = 233,333円となり、売上に含まれる消費税額は233,333円 - 150,000円 = 83,333円増加します。つまり、消費税率引き上げによって、83,333円の消費税を自社で負担しなければならず、利益が減ってしまうことになります。
原則課税の場合、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた額が消費税の納税額となります。発注元が原則課税を採用している場合はこの取引で支払う消費税が増えても、納税時に支払う消費税額がその分減るので、業績への影響はありません。まずは消費税率改定にともなう変更契約の締結を発注元に依頼するのがよいでしょう。一方、発注元がもし簡易課税制度を採用していると売上金額から消費税額を算出するため、支払った消費税額が増えても納税額は変わりません。つまり支払う消費税額が増えれば利益が減ってしまいます。契約の変更が難しい場合は、納期を平成26年3月31日以前に変更すれば収益の減少は避けられますが、開発メンバーからの批判は避けられないでしょう。
また、これから契約するものについては、納期によって消費税率が変わってきますので、見積書作成の段階から注意が必要です。
保守/サポート契約
クリアコードでは過去に構築したシステムの保守/サポート契約を1年契約で締結していて、売上は毎月一定額を計上しています。保守は物の引渡しを要しない契約であり、経過措置の対象外となります。一方で保守契約の代金は契約時に一括して受け取っており、受け取った消費税はすべて5%でした。しかし現在の売上計上基準では、来年4月以降に売上計上するものについては消費税率が8%になってしまいます。つまり平成26年4月1日以降に契約期限が到来するものについては対応が必要となります。
確認のポイント
- 平成26年4月1日以降に契約期限が到来するもの
- 平成26年3月31日までは消費税率5%
- 平成26年4月1日以降は消費税率8%
例えば次の保守契約を締結していたとします。
- 契約期間 平成25年10月1日から平成26年9月30日
- 契約金額 252,000円(内消費税12,000円)
- 代金受取 平成25年10月31日
この保守契約では、毎月月末に21,000円を売上計上しています。平成25年10月から平成26年3月までは消費税率は5%となるので、売上金額のうち、1,000円が消費税となります。しかし平成26年4月からは消費税率8%となるので、もし消費税率引き上げ分を追加でもらうことができなければ、売上金額のうち、21,000 / 1.08 * 0.08 = 1,555円が消費税とみなされるため、1,555 - 1,000 = 555円を自社で負担しなければなりません。 対策としては、平成26年4月から平成26年9月までの6ヶ月分の代金120,000円について、消費税の差額 120,000 * ( 8% - 5% ) = 3,600円をお客様に追加で負担してもらう方法が考えられます。また、別の方法としては売上の計上時期を変更することによって消費税率改定による売上減少の影響を回避することができます。保守契約の場合、代金受け取り時に一括して売上計上することが認められているので、平成25年10月31日に全額を売上計上すれば消費税率は5%となります1。ただし、売上計上基準を変更した場合はすべての取引について同じ基準を適用し、かつ毎期継続的に適用しなければなりません。
また、これから契約を締結するものについては、平成26年3月までは5%、平成26年4月以降は8%の消費税率を適用しなければなりません。さらに契約が平成27年10月を超える場合は、平成27年10月以降は10%とする必要があります。ただし、平成27年10月に10%に引き上げられることが確定していませんので、もし引き上げが行われなかった場合は差額を返還するなどの対応が必要となります。
支出面での影響
クリアコードの場合、請け負った業務について外注することはないので、売上への影響で行った平成26年4月をまたいだ契約のチェックは不要でした。またその他の経費の支払いについては、原則課税を選択しているので、支払う消費税額が増えても、それは納税額が減るだけなので業績への影響ないことが確認できました。
簡易課税を採用している企業だと、納税額は売上高から算出されるので、消費税の支出を抑えればその分利益が増えます。簡易課税の場合は3月末までに経費支出をするのがよいでしょう。
まとめ
消費税率引き上げによって業績にどのような影響があるのか、また影響がある取引についてどのような対策が必要か、クリアコードで検討した結果を紹介しました。請負契約、保守契約のいずれも平成26年4月1日をまたぐものについては、対策が必要となる可能性があります。対策が必要となった場合、お客様にも影響が及びますので、早期に確認するのがよいでしょう。
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経理処理については税理士事務所等にご確認ください。 ↩