はじめに
7月12日につくばインターンシップ・コンソーシアム主催の夏休みインターンシップマッチングフェアにインターンを受け入れる企業として参加してきました。中小、ベンチャー企業16社と50名ほどの学生さんが参加していました。クリアコードのブースには10名近い学生さんがきてくれました。ブースではクリアコードの業務内容、インターンシップを実施する理由、現在実施しているインターンシップを紹介しました。ブースにきてくれた学生さんはフリーソフトウェアでビジネスをしているというクリアコードの特徴に興味をもったようで、どうやってフリーソフトウェアでビジネスができるのかという質問をよく受けました。そこで今回はクリアコードがどうやってフリーソフトウェアでビジネスをしているのか紹介します。
クリアコードの業務内容
クリアコードは2006年7月25日に創業し、今月7周年を迎えました。これまでの7年間、さまざまな業務を行ってきました。この7年間に携わった案件を3つの時代にわけて紹介します。
初代社長時代
初代社長時代は第1期と第2期です。エンジニアの雇用を確保する目的で立ち上げたのがクリアコードでしたので、雇用を維持できるように案件を確保することが当時の最優先課題でした。エンジニア全員がデスクトップ関連のフリーソフトウェア開発に関する高いスキルを有していたので、それを活かすことが案件獲得の近道でした。また当時は経済産業省主導でOSSの推進事業がIPAなどで行われていました。
第1期(2006/7から2007/6)
IPAや自治体など公共系の案件が中心でした。フリーソフトウェアのデスクトップ環境導入支援やフリーソフトウェアを使ったシンクライアントシステムの開発など、デスクトップ分野の案件が多くありました。また「ソースコードがあればなんとかできる」を合言葉に他社で対応できなかった案件や、開発が頓挫しかけた案件を獲得していました。
主な業務
- IPAのOSS活用基盤整備事業
- Linux環境における外字管理システムの仕様開発とプロトタイプ作成
- 栃木県二宮町での自治体導入実証事業(OpenOffice.orgの導入支援やデスクトップ環境の整備を担当)
- シンクライアントシステムの開発
- シンクライアントシステムの自治体導入
- マーケティング・デザイン業務の労働者派遣
- 動画共有サイトの開発(Ruby on Rails)
第2期(2007/7から2008/6)
第1期にIPAの事業を一緒に行なった企業との取引が拡大し、フリーソフトウェア本体へ機能追加する業務がでてきました。またMozilla Japanのサポートパートナーとして、FirefoxやThunderbirdのアドオン開発やサポートを本格的に開始しました。さらにRubyをつかったWebサービスの開発など、民間企業との取引が拡大しました。またこの時期に、CutterやUxUといったテスティングフレームワークの開発を開始しました。
主な業務
- IPAのOSS活用基盤整備事業
- 国際標準文書フォーマットの日本語機能拡張開発プロジェクト(OpenOffice.orgの拡張機能開発)
- 動画共有サイトの開発(Ruby on Rails)
- Thunderbird、Firefoxのサポート業務
- Firefoxのアドオン開発
- フリーソフトウェアの機能追加や性能評価
- テスト自動化フレームワークの開発
2代目社長の20代
第2期に黒字化し、取引先も順調に増加しました。フリーソフトウェア開発者集団として、社長はフリーソフトウェア開発者が務めるのがよいとの判断で、第3期に現社長に社長を交代しました。
第3期(2008/7から2009/6)
milter managerをIPAの事業で開発しました。このmilter managerが後の取引先拡大につながりました。また全文検索エンジンSennaを開発していた未来検索ブラジルさんとCutterをつかったテスト開発で取引が始まりました。Mozillaのサポート業務は順調に拡大し、数万人規模の企業への導入支援など大規模な案件が増加しました。
主な業務
- Senna、groongaのテスト開発
- IPAのOSS活用基盤整備事業
- 迷惑メール対策ポリシーを柔軟に実現するためのmilterの開発(milter managerを開発しフリーソフトウェアとして公開)
- Windows用デスクトップ・アプリケーション開発
- 動画共有サイトの開発(Ruby on Rails)
- Firefox、Thunderbirdの企業導入・サポート業務
第4期(2009/7から2010/6)
リーマン・ショックの影響で、Webサービスの開発案件やフリーソフトウェア導入案件が中止となるなど、案件の確保に奔走した1年でした。groongaやデジタルサイネージの開発がスタートし、拡大しました。これらのプロジェクトではお客様の開発チームと一緒に開発することになります。
主な業務
- デジタルサイネージシステムの研究開発
- groongaの開発
- 大学へのLinuxデスクトップ環境ならびにmilter manager導入
- Firefox、Thunderbirdの企業導入・サポート業務
- Firefoxのツールバー開発、Firefoxをつかった研究開発
- NICTベンチャー支援事業(モバイル分野の研究開発を行いました。後のデジタルサイネージシステム開発(組込システム開発)参入の基礎となりました。)
第5期(2010/7から2011/6)
2010年8月に主要取引先であるミラクル・リナックスさん、未来検索ブラジルさん、コスモエアさんと資本提携し、この3社との取引が拡大しました。さらにmilter managerの導入案件がきまり、milter managerとmilterの開発がビジネスに発展しました。他にも開発、サポート、システム構築などさまざまな業務が同時に進行し、かつ新規取引先との取引開始も多く、社内リソースが逼迫しました。
主な業務
- groongaの開発
- デジタルサイネージシステムの開発
- 社内文書検索システムの開発
- milter managerの機能追加とmilterの開発
- Sambaの導入とサポート
- Firefox、Thunderbirdのサポート、導入支援
- メールマガジンシステム開発(リソース足りず外注する)
2代目社長の30代
あんなに若かった社長も30歳を迎えました。
第4期、第5期と激動の2年をすごし、あらためてフリーソフトウェア開発をしたいという思いを社員間で再確認しました。フリーソフトウェアの開発だけでなく、フリーソフトウェアに関する技術情報やノウハウを積極的に伝えることを社長だけでなく他のメンバーも意識するようになりました。
第6期(2011/7から2012/6)
第5期にgroongaの開発とデジタルサイネージシステムの開発が柱となり、お客様のビジネス拡大にあわせて開発体制を強化しました。また、milter managerの大規模導入案件は長期に渡る開発、テスト期間を経て、無事運用開始しました。Mozilla関連では、他のサポートパートナーとの連携やESR版リリースによって企業導入案件が増加しました。導入やサポートに関連して開発したアドオンをフリーソフトウェアとして公開できるよう契約を見直しました。
主な業務
- groongaの開発(準委任契約)
- デジタルサイネージシステムの開発(受託と準委任)
- milter managerの大規模導入案件
- Firefox、Thunderbirdのサポート、導入支援
第7期(2012/7から2013/6)
主要取引先との開発案件がすべて準委任契約になりました。クリアコードがお客様の開発チームに対して提供するものを最大化しながら、一緒に開発をすすめていくには、受託よりも準委任という契約形態があっていました。
この時期、新規のお客様からもフリーソフトウェア開発のお話をいただきましたが、一緒に開発するためのリソースが確保できない状況でした。そこでサポートサービスを利用し、設計支援やコードレビュー、障害調査といったサービスを提供して、milter manager、groonga、GStreamerをつかったシステム開発を支援することができました。また、クリアコードの開発スタイルを伝えるサービスとしてコミットへのコメントサービスを開始しました。
主な業務
- デジタルサイネージシステムの開発
- groongaの開発
- milter manager、groonga、GStreamerのサポート
- Firefox、Thunderbirdのサポート、導入支援
- サーバ監視ツールの研究開発
- コミットへのコメントサービス
クリアコードがフリーソフトウェアをビジネスにできた理由
クリアコードがフリーソフトウェアの開発やフリーソフトウェアを使ったシステム開発をビジネスにできたのは、次の2つの要因によるものと考えています。
確度の高い案件からフリーソフトウェアへ貢献できる案件へ
初代社長時代は国の事業が中心でした。また民間企業との取引においてもフリーソフトウェアと関係ない案件も請けていましたし、フリーソフトウェアに関係するものでも本体の開発よりは、システム構築などフリーソフトウェアの導入支援が中心でした。
2代目社長の20代ではmilter managerを開発し、groongaの開発やデジタルサイネージシステムの開発がスタートするなど、現在の事業のベースとなるものが始まりました。しかし契約形態は短期の受託開発がほとんどでしたので、経営を安定させるために、案件が途切れないようにすることを優先していました。そのためフリーソフトウェアとして公開できるできないに関わらず受注確度の高い案件を優先していました。
2代目社長の30代では、フリーソフトウェアへのこだわりを強く打ち出すようになりました。また、主要取引先からクリアコードの開発チームを評価していただき、長期の契約のもと、一緒にフリーソフトウェアやフリーソフトウェアを使ったシステムを開発できるようになりました。その結果、その他の企業との取引でもフリーソフトウェアに貢献できる案件を優先できるようになりました。
フリーソフトウェア活動の広告宣伝効果
クリアコードのはこれまでに数多くの企業と取引をしてきました。一般的に取引先を獲得したいと考えれば、こちらから対象となるお客様に対して営業活動を仕掛けるものですが、クリアコードの場合そのようなコストはほとんどかけていません。もちろんこちらからの働きかけによって取引先を獲得したこともありますが、お客様の多くはフリーソフトウェアに関するなんらかの課題を解決しようと調べた結果、クリアコードを知り、問合せしてきてくれました。
milterであればクリアコードが開発するmilter managerのサイトやククログに関係する情報があり、そこからクリアコードを知って、電話やメールでご相談いただくという具合です。GStreamerやgroonga、Mozillaなどはククログで公開している技術情報がきっかけとなることが多いです。クリアコードのメンバーが業務に関連してフリーソフトウェア開発プロジェクトにパッチを送っていたことを手がかりにお問合せいただいたこともあります。つまりクリアコードはフリーソフトウェアを開発したり、開発に関するノウハウを公開することで、他社から認識され、場合によっては技術力を認めてもらうことができ、取引先獲得につながっています。フリーソフトウェアに関する案件の獲得には、この戦略が実に効果的だったと思います。
まとめ
フリーソフトウェアを開発したりノウハウを公開することが、フリーソフトウェアの開発やサポートを求めるお客様と出会うための有効な手段となりました。真に必要としてくれるお客様と取引できるので、しっかりとしたアウトプットを出すことができれば、信用の獲得と取引の継続につながりました。お客様と長期にわたる取引関係を築くことができたことによって、経営が安定し、より一層フリーソフトウェアに貢献できる案件を優先することができるようになりました。
創業当時にフリーソフトウェアでビジネスしたいと願っていましたが、現在では実現できています。一方で課題もあります。それはフリーソフトウェアを一緒に開発しようと相談していただく新規のお客様にお応えできていないことです。これはエンジニアの不足とエンジニアの育成が間に合っていないことが原因です。インターンシップやパッチ採用を通じた採用活動は、この課題を解決するための取り組みです。クリアコードで一緒に開発してみたいという方がいらっしゃいましたら、是非インターンシップやパッチ採用に応募してください。