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Ruby-GNOME2 0.18.0リリース

0.17.0のリリースから1ヶ月も経っていませんが、Ruby-GNOME2バージョン0.18.0がリリースされました。

Ruby-GNOME2はGTK+を含むGNOME関連ライブラリのRubyバインディング集です。

目玉

このリリースの目玉はメモリリークの修正と、新規バインディングの追加です。

メモリリークはRuby/GLibの中にもあり、Ruby-GNOME2関連ライブラリ全体で影響を受ける可能性が高いものでした。0.17.0を利用している場合は0.18.0に更新することをおすすめします。

新規バインディングとして以下の2つが追加されました。ただし、まだどちらも「実験的」マークがついていて、今後APIが変更される可能性があります。

  • Ruby/GtkSourceView2
  • Ruby/GooCanvas
Ruby/GtkSourceView2

Ruby/GtkSourceView2はソースコードハイライトウィジェットであるGtkSourceView 2.x系列をサポートします。以前のリリースにも含まれているRuby/GtkSourceViewはGtkSourceView 1.x系列をサポートしていて、2.x系列はサポートしていませんでした。

今回、別ライブラリになっているのはAPIに非互換性が発生したためです。それぞれのライブラリはrequireが異なります。Ruby/GtkSourceViewからRuby/GtkSourceView2へ移行する場合は以下のように変更する必要があります。

変更前:

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require 'gtksourceview'

変更後:

1
require 'gtksourceview2'

GtkSourceView 1.x系列は開発が終了していて、現在は2.x系列が開発されています。今後のことを考えるとRuby/GtkSourceViewからRuby/GtkSourceView2へ移行を検討した方がよいのではないかと思います。

Ruby/GooCanvas

Ruby/GooCanvasは描画にcairoを用いるキャンバスウィジェットであるGooCanvasのバインディングです。

キャンバスウィジェットとは図形や他のウィジェットなどを自由に配置できるウィジェットです。Inkscapeなどのようなグラフィックツールを思い浮かべるとイメージしやすいかもしれません。Inkscapeでは丸や四角などの図形を好きな場所に配置することができます。キャンバスウィジェットを用いることで、そのような機能を持つアプリケーションを簡単に開発することができます。

現在、GTK+にはキャンバスウィジェットが含まれていませんが、将来のGTK+ではGooCanvasがGTK+のキャンバスウィジェットとして取り込まれるのではないかと予想しています。GTK+ではProjectRidley/CanvasOverview - GNOME Live!で検討しているようです。GooCanvasを含むいくつかのキャンバスウィジェットを比較しています。

ちなみに、Ruby-GNOME2にはRuby/GnomeCanvas2というGnomeCanvasのバインディングがあります。ただし、GnomeCanvasは非推奨ライブラリになっています。そのため、Ruby/GnomeCanvas2も将来的にRuby-GNOME2から削除される可能性があります。

これから新しくキャンバスウィジェットを用いたアプリケーションを開発する場合はRuby/GooCanvasも候補のひとつに入れた方がよいかもしれません。ただし、まだ「実験的」な段階なのでAPIが変更される可能性があることに注意する必要があります。

協力のお願い

アナウンスメールにもありますが、Ruby-GNOME2プロジェクトでは協力してくれる方を募集しています。例えば、バインディングを開発してくれる方、ドキュメントを書いてくれる方、英語のドキュメントを日本語化してくれる方、リリース作業をしてくれる方などを募集しています。

興味のある方はruby-gnome2-devel-ja MLまでお願いします。

0.17.0がリリースされてから何人かの方がドキュメント関連作業で協力してくれています。ありがとうございます!

タグ: Ruby
2008-10-01

Cutter 1.0.5リリース

ここには書いていませんでしたが、Cutter 1.0.3のリリース のリリースの約1ヶ月後に1.0.4がリリースされました。 さらにその約2ヶ月後の昨日、1.0.5がリリースされました。 CutterとはC言語用の単体テス トフレームワークです。

新機能

詳細は NEWSに 書いてありますが、1.0.5での目玉新機能は以下の3点です。

  • 画像データ入出力・操作ライブラリ gdk-pixbuf (←少し古い。最新版(英語) )をサポート
  • 多くの検証とテスト便利関数を追加
  • ユーザ定義検証作成のサポートを強化

gdk-pixbufサポート

gdk-pixbufをサポートすることにより、画像が等しいかどうかを検 証できるようになりました。また、もし、画像が異なる場合は画像 間の差分を示し、画像のどこが異なるのかをわかりやすくしていま す。

例えば、このような画像を比較したとします。

期待画像 実際の画像

これらの画像では赤い丸の部分が異なっています。

これらの画像の差分画像は以下のようになります。

差分画像

左上に期待画像、右上に実際の画像、左下に異なるピクセルを示し た画像、右下に異なるピクセルを強調表示、同じピクセルを弱めに 表示した画像を配置しています。左下の画像を見ることでどの部分 が異なるのかが具体的にわかり、右下の画像を見ることで比較画像 はどのあたりが異なるのかを相対的に確認する事ができます。

もっとよい表現方法があるかもしれませんが、しばらくはこの方法 を採用しする予定です。もしかすると、今後、よりよい表現方法に 変更されるかもしれません。

ちなみに、この機能はPDF操作・レンダリングライブラリである Popplerテスト で利用されていま す。

検証・テスト便利関数の追加

Cutterを使用していて、こんな検証・便利関数があったら便利だ、 と感じたものは積極的にCutter本体に取り込んでいます。

1.0.5では12個の検証、9個の便利関数が追加されました。追加され た検証・便利関数のリストは NEWSに 書かれています。

ユーザ定義検証作成のサポートを強化

今までもユーザが独自で検証を定義することはできたのですが、バッ クトレースを取得するためにマクロとして定義する必要がありまし た。

1.0.5では cut_trace() というマクロが追加され、検証を関数として定義してもバックトレー スを取得することができるようになりました。マクロは可変長引数 が簡単に書けるなど便利な事も多いのですが、構文エラーが見つけ にくいなどという問題もあります。1.0.5からは関数とマクロを使い 分けられるようになり、より便利にデバッグのしやすいテストが書 けるようになりました。

まとめ

Cutter 1.0.5ではテスト作成・デバッグ支援の機能が強化され、よ り便利なテスト環境を提供するようになりました。今までよりもC 言語でのテスト作成が楽しくなるかもしれません。

[チュートリアル ] [リファレンスマニュアル ] [ダウンロード ]

タグ: Cutter | テスト
2008-10-16

Rabbit 0.5.8リリース

Ruby-GNOME2を使って実装されているプレゼンテーションツールRabbit 0.5.8がリリースされました。

0.5.8では部分的にClutterをサポートしています。

Clutter

Clutterは高速で、視覚的にリッチで、アニメーションするGUIを作成するためのライブラリです。Clutterのこれらの特徴はOpenGLをバックエンドに使う事で実現されています。 ClutterはLinux/Mac OS X/Windowsなどマルチプラットフォームで動作します。さらに、組み込み環境でも動作し(OpenGL ESを利用)、デモ動画も公開されています。

ライブラリを使用する視点で見ると、GStreamer/cairo/Pango/GTK+などGNOME関連のライブラリと親和性が高いこともあり、便利で使いやすいAPIになっています。

ClutterにはRuby/Python/Perl/Valaなど各種言語用のバインディングがあります。リッチなインターフェイスを作成したい場合にClutterを利用してみてはどうでしょうか。

タグ: Ruby
2008-10-20

GaUnit 0.1.6リリース

GaUnit 0.1.6がリリースされました。 ([アナウンス]|[ダウンロード])

GaUnitは便利なSchemeインタプリタであるGauche用のxUnitベースの単体テストフレームワークです。0.1.6ではGauche標準のgauche.testモジュール(リンク切れしそうなリンク)用に書かれたテストを実行することができるようになりました。(簡単なものであれば)

gauche.test互換レイヤーの実装

gauche.testのテストを実行するために、テストスクリプトを読み込み、GaUnitが理解できるようにS式を変形します。変形されたS式はGaUnitが提供するgauche.test互換APIが使える無名モジュール内で評価され、GaUnitのテストとして認識されるようになります。

SchemeではマクロでS式を変換するということはよく行われます。もし、それで十分でない場合は上記のように、スクリプト自体をS式として読み込んで、変換して、評価、ということも行うことができます。これは、S式がプログラムで扱いやすいためにできると言えるでしょう。他の言語、例えばJavaScriptでは、プログラムを変換するためにtoSourceしたものをreplaceしてevalするということが行われることもあるようです。

ただ、非常に多くの場合はこのような方法は必要ありません。今回は(use gauche.test)をどうしてもうまく扱えなかったのでこの方式をとっています。

ファイルの内容をS式のリストに変換

Gaucheスクリプトを書くときのちょっとした豆知識を紹介しておきます。

Gaucheスクリプトの内容をS式のリストとして読み込む処理は以下のようになります。ファイル先頭のcoding: utf-8などのような文字エンコーディング指定を考慮するためにopen-coding-aware-portをはさむことを忘れてはいけません。

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(define (file->sexp-list file)
  (call-with-input-file file
    (lambda (input)
      (port->sexp-list (open-coding-aware-port input)))))

まとめ

GaUnit 0.1.6ではgauche.testのテストも実行できるようになったため、既存のgauche.testのテスト(大事な資産)を捨てることなくGaUnitに移行できるようになりました。これを機にGaUnitも試してみてはいかがでしょうか。

gauche.testであれGaUnitであれ、自動化されたテストがあるということは安心できるものです。

タグ: テスト
2008-10-23

Ruby-GetText-Packageとrake gems:installの共存

Ruby-GetText-Packageだけというわけではないですが、app/controllers/application.rbで何かを行う*1gemを使っているとrake gems:installで足りないgemをインストールできません。経験したことがあるけど別に手動でインストールすればいいやということで、おそらく、わりとうやむやにされていることが多い問題ではないでしょうか。

例えば、Ruby-GetText-Packageだと以下のようにapp/controllers/application.rbを変更する必要があります。

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class ApplicationController < ActionController::Base
  init_gettext "blog"
end

Ruby-GetText-Packageのgemがない場合は「init_gettext」が定義されていないため「NameError」が発生します。そのため、rake gems:installをしようとすると以下のように失敗してしまいます。

% rake gems:install
(in /tmp/blog)
rake aborted!
undefined method `init_gettext' for ApplicationController:Class

(See full trace by running task with --trace)

これを回避するために「足りないgemがあるときはinit_gettextを使わない」という方法があります。 あまりきれいな方法ではありませんが、紹介します。

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class ApplicationController < ActionController::Base
  if Rails.configuration.gems.reject {|gem| gem.loaded?}.empty?
    init_gettext "blog"
  end
end

もし、config/environment.rbでconfig.active_record.observersを指定しているなどして、app/model/以下も読み込まれるのであれば、ダミーのN_を定義しておくとよいでしょう。

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class ApplicationController < ActionController::Base
  if Rails.configuration.gems.reject {|gem| gem.loaded?}.empty?
    init_gettext "blog"
  else
    class ActiveRecord::Base
      def self.N_(*args); end
    end
  end
end

これでRuby-GetText-Packageを使っているときでもrake gems:installが動くようになります。

% rake gems:install
(in /tmp/blog)
gem install gettext
Bulk updating Gem source index for: http://gems.rubyforge.org/
Successfully installed gettext-1.93.0
1 gem installed
Installing ri documentation for gettext-1.93.0...
Installing RDoc documentation for gettext-1.93.0...

以下、「足りないgemがあるとき」の判断方法について少し書いてみます。

足りないgemがあるとき

Railsでは「足りないgemがあるかどうか」を示すAPIを提供しているのはRails::Initializerです。ただ、残念ながらconfig/environment.rbの中で作ったRails::Initializerはどこにも保存されていないので、無理やり引っ張り出す必要があります。具体的には以下のようなコードになります。

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initializer = nil
ObjectSpace.each_object(Rails::Initializer) do |object|
  initializer = object
  break
end
initializer.gems_dependencies_loaded

しかし、この方法ではRails::InitializerがGCされてしまっていると動きません*2

また、ObjectSpaceはできれば使いたくないものです。そのため、もう少し安全で、何をしているのかがまだわかりそうな方法の方がよさそうです。そのための「足りないgemがあるかどうか」を判断する方法が以下のようになるというわけです。

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Rails.configuration.gems.reject {|gem| gem.loaded?}.empty?

ただ、この方法はRails 2.1.2(や2008-10-30でのmaster)では動きますが、もし、Rails内部の「足りないgemがあるかどうか」を判断する方法が変わった場合は動かなくなる可能性もあります。 「あまりきれいな方法ではありませんが」と書いたのはこのためです。

まとめ

Ruby-GetText-Packageを使っている場合でもrake gem:installを利用する方法を紹介しました。

同じような問題は他のライブラリでも起こりうると思うので、そのような場合も同じように問題を回避できると思います。

*1 もう少しいうと、読み込まれた時に実行される場所(例えばクラス定義の中)で何かを行う場合。メソッド定義の中などその場では実行されないものは関係ない。

*2 多くの場合はそんな状況にはならないでしょう

タグ: Ruby
2008-10-30

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